9割が嫌う販売方法が、推し活の中心に残っている
ランダムグッズをめぐる消費者調査で、嫌い、または非常に嫌いと答えた人が約9割に上った。にもかかわらず、キャラクター、アニメ、ゲーム、アイドルの周辺では、ランダム販売はなお広く使われている。
ここで重要なのは、ファンがグッズを買わなくなったわけではないことだ。むしろ好きな作品や推しを応援したい気持ちは強い。その熱量があるからこそ、欲しいものを選べない販売方法への不満も大きくなる。
つまり問題は、ランダムグッズが売れるかどうかではない。売れる仕組みが、ファンとの信頼をどこまで削るかである。
売り手には、在庫と単価を安定させる強い理由がある
ランダム販売が残る理由は単純ではない。売り手にとっては、人気キャラクターだけが売れて不人気在庫が残るリスクをならし、まとめ買いを促し、イベントやSNSで話題を作りやすい。
特にIPビジネスでは、どのキャラクターがどれだけ売れるかを完全には読めない。ランダム化は、需要予測の失敗を消費者側の購入回数で吸収する仕組みになる。
この設計は短期の売上には強い。だが、その強さはファンの納得感と引き換えになりやすい。
不満は公式の外へ流れ、交換と転売を大きくする
欲しいものを選べない購入体験は、公式販売の外側に交換、譲渡、転売の市場を作る。ファン同士の交換はコミュニティの一部にもなるが、目当てを得るまでの負担が増えれば、二次流通の価格差や不公平感も目立つ。
ここでIP企業が失うものは、単なる売上機会ではない。公式から買ったのに満足できず、別の場所で探すという体験が積み重なると、購入の楽しさが作業に変わる。
推し活の消費は、納得して応援している感覚があるから続く。ランダム販売がその感覚を弱めるなら、売上は残っても関係性は薄くなる。
これから問われるのは、ランダムをやめるかではなく設計を変えるかだ
すべてのランダム販売が同じように悪いわけではない。低単価で遊びとして成立するもの、交換を前提に楽しめるもの、限定性が明確なものは残りうる。
ただし、価格が高い、種類が多すぎる、目当てが出る確率が低い、再販売や受注の選択肢がない場合は、楽しさより負担が前面に出る。ここが販売設計の分岐点になる。
選べる高単価商品、受注販売、一定数購入後に選択できる仕組み、公式交換機能など、売上と納得感を両立する余地はある。
IP企業の競争軸は、熱量を搾ることから信頼を残すことへ移る
アニメやゲームのIPは、作品、キャラクター、ファンコミュニティ、イベント、グッズが一体で価値を作る。グッズ販売だけを切り出して短期収益を最大化すると、作品への好意まで傷つける可能性がある。
今後の差は、どれだけ売れるかだけではなく、買った後にファンが納得できるかで出る。ランダム販売を続けるとしても、種類、価格、確率、再販売、交換支援の設計が見られる。
推し活市場が大きくなるほど、ファンは販売方法にも敏感になる。好きだから買う市場を長く続けるには、好きでいられる買い方を用意する必要がある。