防衛費は「続けられるか」の段階に入った
4月7日に成立した2026年度予算で、防衛費拡大は理念や方針の確認から、税を集め、契約し、部隊の能力に変える段階へ進んだ。必要な防衛力をどう持つかと、誰がどの形で負担するかを切り離せなくなっている。
家計や企業に届く経路は単純な増税だけではない。法人課税、たばこ税、所得税の組み替え、長期金利が国債費へ与える影響、社会保障や教育、防災との予算競合が、同じ安全保障負担として表れる。
43兆円の計画が今年の予算に降りた
2023-2027年度の防衛力整備水準は43兆円程度。2026年度の防衛関係予算は9兆353億円で、防衛力整備計画対象経費は8兆8,093億円となった。5年計画の終盤に入り、2027年度の8.9兆円程度が次の山になる。
この数字は単年度の買い物ではなく、複数年度契約と後年度負担を伴う。2026年度に契約を積めば、支払い、納入、維持整備、人員訓練はその後の歳出にも残る。
負担は三つの経路で広がる
第一は税だ。防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から申告実務が生じる。法人税額への4%付加税で、基礎控除があるため全企業一律の負担ではないが、対象企業には納税管理と価格転嫁の判断が加わる。
第二は消費と所得だ。加熱式たばこ課税は2026年4月と10月に見直され、国のたばこ税率は2027年4月から3段階で上がる。所得税は2027年分から防衛特別所得税と復興特別所得税の組み替えで、防衛財源の流れが源泉徴収と申告に入る。
第三は金利と予算競合だ。2026年度予算で国債費は31兆2,758億円、利子及割引料は13兆371億円まで膨らむ。金利上昇が続けば、防衛費そのものを削らなくても、他分野へ使える余地が狭まる。
金額があっても、すぐ能力にはならない
予算化と能力化の間には時間差がある。ミサイル、弾薬、艦船、航空機、施設整備は、契約から納入、検査、訓練、運用開始まで複数年を要する。見かけの予算増が、同じ速度で現場の抑止力に変わるとは限らない。
詰まりやすいのは金額の外側だ。自衛官の採用・定着、基地や弾薬庫の用地、自治体と住民の調整、国内外サプライチェーンの供給力がそろわなければ、契約はできても実装が遅れる。未消化や遅延が増えれば、負担を求める説明の土台も弱くなる。
企業と家計が見るべき次の数字
最初の確認点は、2026年夏の2027年度概算要求だ。8.9兆円程度へ向かう内訳が、装備、維持整備、人員、施設のどこに置かれるかで、負担が能力に変わる速度が見える。
企業は防衛特別法人税の実収、申告負担、価格転嫁の余地を見る必要がある。家計はたばこ税と所得税の制度変更だけでなく、金利上昇時の国債費、社会保障や教育、防災との優先順位を通じて、間接的な負担を受ける。
判断が変わる条件は四つある。税収が想定を下回る、長期金利が国債費試算を押し上げる、調達や人員確保が遅れる、国会で他分野予算との競合が具体化する。このどれかが強まれば、拡大路線は再設計の圧力を受ける。
安全保障は財政規律の説明競争になる
防衛費増加の是非だけでは、次の判断は足りない。必要な能力があるとしても、それを恒久財源、後年度負担、執行能力の範囲で維持できるかは別の問いになる。
持続する政策になる条件は、税と金利の説明、調達の進捗、人員と施設の実装、他分野予算との優先順位が同時に示されることだ。安全保障負担は、装備の名前よりも、予算と現場が同じ速度で進むかで評価される段階に入った。